パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第33章 オーボエが鳴り響く放課後

唯は、不安でいっぱいのまま、朝の通勤電車に乗っていた。

12月の末に病院を退院した唯は、二ヶ月間、学校に行けれなかったことから、留年…と言う言葉をゆうに告げられていた。

入院している期間が補習で単位を賄えなかったからだ。

「四月から復学しても良いのでは？」

人の目を気にし、唯を傷付けたくない…家族にはそう言われていたが、唯はある目的を持って、学校に行こう…そう思った。

（萌に会いたい…）

けど、唯の話はきっと学校中に知れ渡っているだろう。

どの様な目で見られるか…そう考えた唯は電車の中で俯いた。

冬休み期間家庭訪問したゆうの話では、誠も豊によって、生死を彷徨っていたらしい。

周囲の紘や波留も。

唯はある意味、豊に対して憤り半分どうしたら、こちらに耳を傾けてくれるのだろう…そんな気持ちでいっぱいだった。

（好きな人…ううん…好きだった人…だから…かも…）

二ヶ月間やっていたことは、目覚めた後のショック状態から、薬物投与を含めた心理療法や当事者同士でのカタルシス。

耳に背けたい話もあったが、自分がやられた事に対して実感を持つ事が出来たし、こうやられた事に何年も苦しんでいる人がいる事も知った。

落ち着いた所で、通院に切り替え、こう言った場にもう少しだけ出てみないか…と言う医師の提案で毎週1.2度病院に通い、医師の診察と共に入院していた時、入院している時に参加していた場にも参加していた。

記憶が無い所はあるが、大体のことは覚えている。

唯自身、ゆうに話をした事は全て本音ではあるが、好きだった人への愛着も拭えないでいた。

（付き合って欲しい…そんな事、豊くんに言われる事はないけど、もし仮に言われたても、きっと私は付き合わない。けど…）

唯は窓から見える風景を眺める。

誠は豊を挑発した上で刺されたらしい。

周囲には物凄く怒られたらしいが、第一発見者になった萌の機転で命を助けられ、一ヶ月間入院した上で、今日から復学。

誠は冬休み期間だけの入院だったので、唯の様に留年と言う事は無かったが、一歩間違えれば誠もそうなっていた可能性がある。

（一人の力がこんなに人の人生に影響が出るなんて…）

唯は複雑な気分のまま、電車から降りた。