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手を繋ごう~愛憎Ⅱ~(復旧版)
第34章 誠の涙
ゆうの様子から誠は慌てて

「…あっ!ごめんなさい。生意気な事言って…」

と言う。

ゆうは

「……親の気持ちは子どもが親になったら分かる…って言う。…私も、痛感してるけど…けど、榎本くんにとっては、最悪な環境だった…しか言えないわね…」

俯きながら言うのに

「…ん…」

誠は俯きながら言う。

「まだ、この時間帯は…お母さん、家にいる筈だから…行きましょう…」

と、町内の雪はね作業でだいぶ綺麗になっているが、階段には雪が積もり、靴の跡が無数にある所をゆう先頭で昇り始めた。

豊の家以外に四つ部屋があるが、その前は雪が積もっていて、人が出入りしている形跡はない。

本当に空き部屋なんだな…誠はそう思った。

コンコン

ゆうが、インターホンがないドアをノックする。

中から、はーい、と言う若い女性の声が聞こえ、ガチャッとドアが開く。

そこには、豊と同じく端正な顔つきで華やかに化粧をした、茶髪の女性がいた。

(萌のお母さんと同じくらいか?)

若々しい豊の母…千佳を見て、早苗を思い出す。

千佳はゆうの顔を見た途端、笑顔だった表情から、冷たい表情に変わり

「あら、先生。また来られたんですか?私は何も話す事がありませんし、迷惑ですので…」

と、ドアを閉めようとする。

誠はドアをパシッと掴み、

「俺たちは話があるから、ここに来たんだ」

と、強い口調で言った。

千佳は制服姿の誠を足から顔までじろじろ見ながら

「…何この子。」

と、言いながらドアを開ける。

「豊くんに刺された…川仲誠くんです」

ゆうが誠を紹介すると

「へぇ?!賠償金でも巻き上げに来たの?しかも集団リンチの後に刺されたんなら、意識とか朦朧としてて、息子とは何も関係ないかもしれないじゃない」

千佳は誠が想定していた事を言う。

「…あの時は意識がハッキリしていて、豊くんと話しました。…別に、賠償金が目当てでここに来た訳じゃないです」

と、千佳に話す。
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