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人型~ドール~
第3章 新人モデル沢木馨
ドールケースの中で眠っている内に塩澤家に戻ってきた薫は、漸く解放されたのだと安心した表情を浮かべたが、塩澤家に用意された個室に連れていかれると表情が固まる。
「どう……して……。」
「貴方が卵を産むのを嫌がるのは卵を作る事が辛いからだって都が言っていたけど、今はそうも言ってられないのよ。ここでも毎晩卵を作って貰うわ。」
京子の言葉に薫ははいと力なく返事を返した。
朝研究所と同じように卵を産むと、服を着せられドールではなく人間沢木馨としての仕事が待っていた。薫は昼間は沢木馨、夜はドールの女王としての生活を一ヶ月続ける事になる。
そんな時にCMの仕事が入ってきた。あの彩奈さやかとの共演だ。
CMの内容はドールの宣伝。
「私達ドール生活始めました。」
笑顔でさやかが言うところから始まるこのCMは薫とさやかが新婚夫婦という設定で、ドールははじめ卵なのだとドールを知らない人達に広く伝えるものでもあり、今をときめく人気モデルとなった沢木馨が宣伝している事もあって一気にドールの普及が進んで行く。それに合わせるように薫は毎晩卵を産む事を強いられていた。
「まさか、こんなに上手く行くなんて思ってなかったわ。」
「さやかを貶めるんじゃなかったのか。」
「これからよ。今世間で沢木馨と彩奈さやかは付き合っているんじゃないかと思わせるように、沢山共演の予定が入ってるわ。あと、朗報。今日から暫く卵を産む必要は無くなったわよ。」
「良かった……。」
卵を産む必要は無いと聞いて薫は沢木馨としての仕事帰りにも関わらず、車の中で泣いた。
「そんなに辛いのね、卵を産む事って。」
「俺にしか出来ない事は解っている。だが、人間が子供を産むのとはまた違うんだ。卵は早くて1時間でできる。それを大量に産まされるのは痛くて苦しい。都は俺が卵を誤って割ると何時も必ず罰を与えられた。あの個室で俺は都が納得するまでずっと過ごしていたのは京子も解ってるだろ。怖いんだ……。何時も……。」
「感情豊かなのも、都が研究で貴方だけだって言ってたわね。他のドールが羨ましい?」
「……それは……無い。ドールは捨てられた時に命を失う。だが俺は……捨てられれば次の主が引き取る。死ぬ事は無い。」
「そうね。貴方とずっと一緒に生きられたら良いのに。」
「京子?」
京子の言葉に薫は驚いた表情をする。
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