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第31章 わたしは女優

『わたしが…………どれだけショックだったか分か



る…？』



妻は分厚く巻いた左手を掲げた。



病院のベッドの上で虚ろな目をしてそう話す妻に、



夫は項垂れるしかない。



『本当に…………済まなかった』



妻の瞳から涙が一滴流れた。



その時だ。



『ちょっと！何なのよ！別れるってどう



いうこと！？』



病室のドアが勢いよく開き、



派手な格好をした女が現れた。




『ヒィッ………！！結美（ゆうみ）！！



お前っ………………』



妻も思わず起き上がる。誰？と訝る。



『いきなり別れるってあり得なくない！？



しかもメッセージだけ寄越してさ！！！』



ーーーー浮気相手が乗り込んできたのだ。



しかも自傷し倒れた妻の病室に。




美華は愕然とした表情を作りながら思う。



（そうよ！そう、こうでなくちゃ）



（乗り込んでくる女は馬鹿。



だけどそんな女を選んだ男はもっと馬鹿だわ。



妻も浮気相手も脳みそが無いんじゃない？）



台本通りだからわかっちゃいるけど楽しくて仕方な



い。




夫は狼狽え、



妻は錯乱した。



地獄絵図だ。



浮気相手は夫に詰め寄るとともに妻に蔑む目を



向け、



『フン！この人いつも言ってるわよ、



「伴侶選びに失敗した」ってね』




と嗤った。