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あんなこんなエロ短編集
第9章 恋

切り終え、
長さを確認しドライヤーでブローされる。
強くなく、弱くもなくちょうどいい押し方で
『彼』の指が三久の頭を支える。
この瞬間、三久の脳裏に映像が過(よ)ぎる。
『彼』はちょうどいい力加減で愛しい誰かを
抱ける人なんだーーーーーーー
「はい、できあがりです。
後ろはこれくらい」
四角いノートのような鏡を背後に映して
後頭部を見せてくれる。
ちょっと動きがついて軽くなってた。
「あ、はい。凄くいいです」
「………よかった」
『彼』が微笑む。
ーーーーーなんていうか、
「笑う」じゃなくて「微笑む」なんだよね……
また見惚れそうになり、
三久は慌てて立ち上がった。
おばさんがトコトコ歩いてきて、
「ありがとうございます。
◯◯◯◯円ですね」と勘定する。
あんまり似てない。
親子………だよね?違うのかな……………
おばさんは受付と勘定の時だけ出てくるのだ。
三久がバッグを受け取ると、
「ありがとうございました」と深々と頭を下げる。
目の端で『彼』を見ると、
片付けをしていた。
軽く頭を下げてくるので、ぺこりと一礼した。
カラン
扉を開くとき、少しの寂しさと少しの安堵感が
三久の体に行き渡る。
夏の風を受けながらバス停を目指す。
頭の中は『彼』のことばかり考えていた。
ーー何歳だろ?少し上だよね。27、8
歳くらい?
ーー何であんな小さな美容室をやってるん
だろう?
ーー優しくて、ちょっと突き放すような話
し方。
ーーー結婚してるのかな?……指輪は無かったか
らしてないのかな……
銀縁のメガネ。
その中にある切れ長の瞳。
長くて黒い髪。
単純な話だ。
疑問は世間話をしながら訊けばよい。
いつも、仕事場ではしているのに。
『彼』だって仕事なのだし。
相手を持ち上げながら軽く自虐を混ぜ、
色んな話題を振る。
共に笑う。
それだけなのに………………
『彼』の前に座ると、カタコトしか話せない外国人の
ような受け答えしかできない。
目だけが彼を捉えて離さない。
長さを確認しドライヤーでブローされる。
強くなく、弱くもなくちょうどいい押し方で
『彼』の指が三久の頭を支える。
この瞬間、三久の脳裏に映像が過(よ)ぎる。
『彼』はちょうどいい力加減で愛しい誰かを
抱ける人なんだーーーーーーー
「はい、できあがりです。
後ろはこれくらい」
四角いノートのような鏡を背後に映して
後頭部を見せてくれる。
ちょっと動きがついて軽くなってた。
「あ、はい。凄くいいです」
「………よかった」
『彼』が微笑む。
ーーーーーなんていうか、
「笑う」じゃなくて「微笑む」なんだよね……
また見惚れそうになり、
三久は慌てて立ち上がった。
おばさんがトコトコ歩いてきて、
「ありがとうございます。
◯◯◯◯円ですね」と勘定する。
あんまり似てない。
親子………だよね?違うのかな……………
おばさんは受付と勘定の時だけ出てくるのだ。
三久がバッグを受け取ると、
「ありがとうございました」と深々と頭を下げる。
目の端で『彼』を見ると、
片付けをしていた。
軽く頭を下げてくるので、ぺこりと一礼した。
カラン
扉を開くとき、少しの寂しさと少しの安堵感が
三久の体に行き渡る。
夏の風を受けながらバス停を目指す。
頭の中は『彼』のことばかり考えていた。
ーー何歳だろ?少し上だよね。27、8
歳くらい?
ーー何であんな小さな美容室をやってるん
だろう?
ーー優しくて、ちょっと突き放すような話
し方。
ーーー結婚してるのかな?……指輪は無かったか
らしてないのかな……
銀縁のメガネ。
その中にある切れ長の瞳。
長くて黒い髪。
単純な話だ。
疑問は世間話をしながら訊けばよい。
いつも、仕事場ではしているのに。
『彼』だって仕事なのだし。
相手を持ち上げながら軽く自虐を混ぜ、
色んな話題を振る。
共に笑う。
それだけなのに………………
『彼』の前に座ると、カタコトしか話せない外国人の
ような受け答えしかできない。
目だけが彼を捉えて離さない。

