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愛はいっぱい溢れてる
第1章 夢風鈴
久し振りに一人で過ごす時間を与えられ、ゆっくり出来た。
でも、考える事は体の事ばかり……
小さい頃は縁側に座り、自然の風で暑さをしのいだものだ。
あの頃は、なるべくクーラーなどをつけずに過ごしていたのに、今はついクーラーに頼る生活。
クーラーを消し、自然の風に当たりたくなり、窓を開けて縁側に座った。
【リン リーン リーン………】
涼し気な風鈴の音。
「ああ、まだこの風鈴使ってるのね。
物持ちが良いわね。
自然の風も気持ちいい」
自然の風だけでは暑かった。
流れる汗を拭ったりもした。
それでも、故郷の風は心地良い。
自然の風にあたりながら、子供の頃の想い出を振り返っていた。
縁側で母に膝枕をされ、耳掃除をして貰った。
とても気持ち良くて、ウトウトした。
夏休みになると、母がスイカを切ってくれると、此処に座って、スイカを食べて庭に種を飛ばした。
夜は父と弟と庭で花火をした。
母は縁側に座り、その姿を見ていた。
蚊取り線香の匂い、風鈴の音。
あの頃の懐かしい想い出が駆け巡る。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「お帰り。凜子」
「お母さん?」
「此処はいいわね。
毎年、夏が来ると、あんたがお腹にいた頃を思い出す。
真夏に大きなお腹だと、結構しんどいもんなんだよ。
そんな時、お父さんが出張のお土産でこの風鈴を買ってきてくれたんだよ。
音って不思議ね。
風に揺れてリンリーンって鳴るだけで、癒やされる。
良い響きだね。
凜子、辛くて苦しい時は、ちゃんと言わないとダメ。
あんたの家族は、そんなあんたを見離したりしない。
ちゃんと守ってくれるよ」
「お母さん………」