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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第12章 ピスケスの女 奉仕の章
 駅前の広場で待ち合わせをする。車から降りてあたりを見回すと、歩道橋の上を急いで走る桃香が見えた。

 手を振るとぱっと顔を輝かせ、両手を大きく振りまた走り出した。――可愛らしいな。

 息を切らしてやってきた桃香は、ふんわり長い髪をかき上げ「こんにちは」と礼儀正しく頭を下げた。
 薄いピンク色のワンピースは身体のラインに添ってはいるが、ゆるいAラインで桃香にとてもよく似合っている。

「急がなくて良かったのに」

 アイボリーのパンプスを見ながら言うと「顔見たらついつい走っちゃって。あ、このパンプス走れるパンプスなんですよ」とヒールを見せて笑った。

 車高の高さがつらいだろうと小柄な桃香の手を引くと「緋月さんて優しいですね」と頬を染めた。

 少し市内を流して買い物に便利が良さそうなところや公共施設、文化施設を案内した。

「あれえ。まだ、お雛様売ってる」
「ん? ああ。こっちは旧暦で祝うんだ」

「へええ。あたし桃の節句に生まれたから、ここだと長いことお祝いされるみたいでいいですねえ」
「ああ、それで名前が桃香なんだね」

 笑顔を見せる桃香の頬は丸い水蜜のようだ。――うお座か。
 

 うお座のマークにもなっている二匹の魚は、怪物から逃げようとしたアフロディテとエロスが離れ離れにならないようひもで結んだ姿だと言われる。
登場人物からも想像されるようにこの星座の色気は群を抜く。しかも甘えん坊で奉仕精神もあるためいやらしく映らない。
つまり可愛いのだ。

 あどけない妹を案内するようでなんだか楽しい時間だった。

「また会ってもらえます?」
「うん。連絡をくれたら迎えに来るよ。行きたいところが合ったら遠慮なく言って」 

 駅で別れた後、助手席を見ると一枚の花弁が落ちていた。車内が甘い香りで満ちている。思わず胸いっぱいに吸い込む自分に自嘲した。
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