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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第2章 アルデバランの女 食欲の章
「きっと牛島さんのほうは、自分でもどうしたいのかが具体的に思えずに、ご主人に伝えられていないのでしょうね。
ご主人はどちらかと言うと俺様的な人ではないようで、奥さんの希望に沿いたいと願うような人ですから。
まずは自分がどうされたいのか、どうしたいのかを明確にすべきですね」

「は、はあ……。具体的に、ですか……。気持ちよくなりたいって、やはり抽象的ですよね」

「例えば、感じる場所がどこで、そこをどのように愛撫されたいとかね」

 小首をかしげて考え込む裕美子を眺めて、僕もこの人はどうされたいのだろうかと考えた。
この女性の特徴は口から喉にかけてある。味わうことが大好きな、味わうことで満足を得るタイプだ。

「一つの提案ですけど。行為に到る前に、何か食べ物か飲み物を口にした方がいいですね。アルコールは感覚を鈍くするといけないから――チョコレートとかかな」

「なるほど。そういわれてみるといつも空腹かもしれません。
あの……あたくし太ってるでしょ? 頑張ってるんですが痩せなくて……。一応、今夜どうかなと思うときは食事を減らすんですよ」

「空腹はいけませんよ。少しでいいですから、何か口にしてください」

 少し明るい顔を見せ始めた裕美子に愛想笑いをし、ではこの辺でと言おうとした瞬間「じゃあ来週、あたくし達のセックスを見てもらえませんか?」と、彼女はとんでもないことを言い始めた。

「えっ」
 ぎょっとしてみても彼女はかまわず言い続ける。

「主人も希望してることなんです。自分で言うのも恥ずかしいんですけど、主人はとても愛してくれていて、あたくしの望むことならなんでも叶えてくれます。
お願いです、先生。観てください」
「うーん」

 悩みながらも一洋真帆との経験で、少し軽率になっているのかもしれない。

「場所はどうするかな。自宅じゃなあ……」

 希望が見えてきたと感じているのか、裕美子は目を輝かせ始めて「それなら、ラブホテルで」と言う。

「ラブホテルは複数の人は入れないと思ったんだけど」
「主人は建築業なんです。最近手がけたラブホテルがあるので、そこならなんとでもなります」

 時間と場所を取り付けて、裕美子は意気揚々と帰って行った。
その軽やかな足取りを、後ろから静かに見守りながら首筋に秋風を感じた。
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