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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第4章 キャンサーの女 母性の章
 半月ぶりに凍える手で『カミノキ』の引き戸を開けた。

「あら、緋月さん、しばらくお顔拝見してませんでしたね」

 女将の優香は優しく声を掛けてき、僕をカウンターに促した。

「久しぶり。ちょっと忙しくてね。まだやってる?」

 店内の座敷席もテーブル席も静かだ。

「さっきまで一組いたんですけど、このいきなりの冷え込みのせいかしらね。雪になるかもしれないって、さっきのお客さんも早めに切り上げちゃったの。
もう仕舞おうかなと思ってたところなの」
「ああ、そう。じゃあ、今夜はよすよ」
「いえ、そんなつもりじゃ。緋月さんがいてくださるなら朝まで開けてますよ」

 僕は笑って椅子に座りなおした。

「腹は減ってないんだ。熱燗つけてください」
「はい。すぐにお持ちしますね」

 がらんとしているが店の雰囲気で温かい気がする。ぼんやりとかじかんだ手をこすり合わせていると、優香が粉引きの白っぽい徳利とぐい飲みを運んできた。

「どうぞ」

 白く滑らかな手で酌をしてくれる。

「ありがとう。女将さんもどう? 一緒に飲まない?」
「そうねえ。いただこうかな」

 隣に彼女がふわりと座った。近くで見ると肌はまだ若く張りもあるようだ。鼻先は丸くあどけなくさえ見える。案外童顔なのかもしれない。

「この店ってもう何年?」
「うーん。私が始めてからは五年だけど母からだと三十年になるかしら」

「年季が入ったいい店構えだよね」
「ええ。母がとても大事にしてきた店です」
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