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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第7章 ライブラの女 バランスの章
「私は一度あなたを見かけたことがありますよ。若い女の子と一緒だったかな」
「若い女の子ねえ。うーん。ああチセちゃんかな」

「モテそうですよね。なんか不思議な感じ。変わったお仕事してそうね」
「まあ、変わってるかも」

 胸ポケットから名刺を差し出した。

「へー。占いの先生なんだー」
「君はアパレル関係? ファッションがとても個性的だけど」
「ううん。ただのお勤め。このワンピはフランスのアンティークなの」

「こだわりがあるんだね。天秤座かな?」
「うわー。すごい。その通りです」

 彼女は秤谷美佳と名乗った。
アイボリーのシャツワンピースの胸もとを大きくはだけ、スカーフをゆるく巻き、アンニュイな雰囲気が醸し出されよく似合っている。
こういう着こなしでだらしなくないのが天秤座の優美さであろう。

「緋月さんは自分のコト占うの?」
「いや。元々自分の事はあんまり観ない方だけどプロになると全然だね」
「そんなもんなんですね」

 表面を撫でるような気楽な会話は今の僕に心地よかった。
 占い師と名乗ると、大抵は観てほしいと手のひらを差し出してくる。僕は手相を観ないのでと今まで何度となく断ってきた。

 美佳は女性にしては珍しく『占い』に食いつくことなく、穏やかな一定のテンションで話しかけてくる。優雅な湖畔にでもいるような心地よさと、同時に麗子への渇望も蘇った。

 本能がむき出しになる麗子と、まるで本能などないというように微笑む能面のような美佳を比べていると胸が苦しくなった。
思わず美佳に当たりたくなるような、嗜虐的な衝動が芽生えてくる。感情的な自分に気づき、表面化する前に立ち去ることにした。

「じゃ、僕はこれで」

 さっと勘定を済ませ、店から出て歩いた。
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