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お兄ちゃんといっしょ
第11章 第11章
「もしかして、このみちゃん?」


 ひふみっくすは笑顔で近付いてくる。
 お兄ちゃんが考えた嘘の名前を呼びながら。


「このみちゃんだよね?」


 私は思わず身を固くした。
 その様子は、ハイと返事したようなものだった。


「迷っちゃったかな?」


 ひふみっくすの背後に、駅時計が見えた。
 11時10分。
 だいぶ遅刻していたようだ。


「…すいません」


 やっとの思いで声を出した私を、ひふみっくすは「ぜーんぜんいいってぇ!」と許した。


 ひふみっくすは、強烈なミント臭がした。
 ブレスケアをひと箱一気食いしたような臭いだ。


「どうしよう。メシでも食ってから行こうか?」


 ひふみっくすはカオナシにしか見えない顔でニコニコしている。
 私は首を横に振った。


「…そう?
 実は僕もゆうべ、まさかこのみちゃんから連絡あるなんて思いもしなかったから会社のヤツらと焼肉食べ放題に行っちゃってさ…
 まだぜんぜん腹減ってないんだ。」


 つうか、ニンニク臭かったらごめんね。
 と、ひふみっくすは歩き出しながら私に詫びた。

 黙ってその後について歩く。



 
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