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お兄ちゃんといっしょ
第14章 第14章
 ビジネスホテルのバスタブは、トイレの横にあった。
 トイレのすぐ真横に小さい浴槽が設置されていて、ビニールカーテンを閉めてシャワーを浴びるシステムのようだった。



 狭い浴槽に二人で入ると、嫌でもときどき肌が触れ合った。
 私の身体は一体どうなってしまったというのだろう。
 まだ男の身体が名残惜しいのか、悪戯に触れ合うたび、じぃんと熱を帯びた。
 バスタブ内の丸い排水口のほうへ流れていくお湯ははじめ真っ赤に染まっていて、次第に薄れていった。



「君、ほんとに奈々って名前なの?」



 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ひふみっくすはアメニティのボディソープかなにかで頭髪以外のすべてを洗い流しながら…私の身体にもついでに泡を撫で付けながら。
 私に尋ねた。


 黙って頷くと、カオナシは満足げに笑った。


「次はいつ会える?」


 ひふみっくすが迫るから、壁際に逃げる。
 顔が近付いてくる。
 腰を屈めて、しつこく私の唇を奪う。
 本物のお兄ちゃんのものだったのに…。
 それなのに、首筋に腕を絡めたのは、なぜなのだろう。 



「お兄ちゃんのほんとの名前教えてくれたら、考える」



 一体なぜ、こんなことを、口走ってしまったんだろう?


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