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お兄ちゃんといっしょ
第17章 第17章
「3日でよかったら、だけど」


 ニキビ面は、無表情でそう言った。
 私は一瞬戸惑ったけど、返事の代わりにすぐ、言わなければならないことを言った。


「すみません、2万円、いるんです」

 ニキビ面は切り傷のような細い目を歪め、黒縁メガネのほうを見た。
 黒縁メガネも険しい顔をして、小さい声で私に尋ねた。


「カネ?」

「お金かえさなきゃ、だめで。泊めてくれるのは、いらないから」



 また、二人は顔を見合わせた。



「こいつかなりやばそうだよ」

「べつに一緒じゃん。泊めないなら気楽でいいじゃん」

「え…つまり?」

「わかるだろ」


 黒縁メガネはニキビ面をじっと見つめながら、汗だらけの顔にかかったメガネを中指で押し上げた。


「…じゃあ、俺ら2人で1万ずつにする?」

「どう?」

「いや…やっぱちょっとキビシイ。ゾゾタウンの支払いあるもん。むしろお前いけんの?」

「うーん俺も食費しかもらってないからなぁ…」

「やっぱ警察?」

「でもなぁ…」

「いくらならいける?」

「3千円なら」

「あ、てかさ。トワとか呼んだらよくない?」

「あ、それな」

「じゃ、全員合わせて2万でもいい?
 どうせうち3日くらいは親いないし、体調良くなるまで寝てからでいいから」



 今度はニキビ面が私に言った。


 …全員で?


 不安がよぎるけれど、私には頷く以外選択肢はなかった。
 生理がくるまえに、絶対にお兄ちゃんにお金を返さなければならないのだから。

 


「…はい」



 また二人は顔を見合わせ、静かに笑った。



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