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お兄ちゃんといっしょ
第23章 第23章
「そんなに私達に恨みがあるの」




 ママはおばあちゃんの背中に隠れるように後ずさりながら、ベッドの上に横たわる白髪頭の太ったオッサン…ちなみに息をしている様子がない…の目の前で、お兄ちゃんに声を荒げた。




「私達が悪かったことは認める、でも、あんたには学費だって出してやったし、これ以上責められなきゃなんないことはなにも…」



 お兄ちゃんは黙ったまま、二人に近づく。
 鬼のような顔したまま後ずさる二人が、不思議だった。



「いや…べつに恨みはないよ」



 お兄ちゃんはパパのベッドに近付き、そばにあったイスにどかっと腰を下ろした。
 死んだばかりの人の顔は、まるで、眠っているかのようだった。
 

  
「そういうお母さんのほうこそ、俺を恨んでるんじゃないの」



 お兄ちゃんは膝に頬杖をつき、パパを見つめているようだった。




 みんな、まるでそこに私なんかいないかのような…
 3人だけしかいないような、空間だった。





「お父さんだけだった。あんなことがあったのに俺のこと、息子として、ちゃんと接してくれたの」




 ママがお兄ちゃんを見つめる目は、実の母親とは思えない、怒りに満ちた目だった。




「…お父さんに謝っておいてよ」




 廊下の向こうから、足音が近付いてくる。
 引き戸が開く前に、お兄ちゃんは立ち上がり、パパに背を向けた。




「龍司はばあちゃんやお母さんが望むとおり立派に更生したから。
 だから昔みたいに融資することができないって、冷たく断ってごめんなって」





 私の方に振り向いたお兄ちゃんの顔は。





「こないだ会った時、土下座までさせたのに、ごめんなって」








 さぞ楽しそうに、笑っていた。





 
 


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