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お兄ちゃんといっしょ
第25章 第25章
「お兄ちゃんさぁ、なんでここにいるってわかったの」



 お兄ちゃんは車をどこに走らせているんだろう。
 運転席にいるお兄ちゃんの後頭部を見つめながら考えた。



「野性の勘」



 お兄ちゃんの返答に遥輝が咄嗟に口を押さえると肩を震わせながら小さな声で「狩野英孝…!」と呟いた。



「ニイちゃん、○○高校の子だって?」



 しかしお兄ちゃんは至って真面目だ。
 急に問いかけられた遥輝が慌てて真顔を取り繕う姿が可笑しかった。



「え!あ、ハイ!3年っす!」



 お兄ちゃんはうふと笑った。



「中等部から入ったの?」


「あ、ハイ。そっすね」


「塾どこ行ってた?」


「塾っすか?行ってないっす」


「え?塾ナシで中学受験したの?」


「まぁ…」


「へぇ〜〜すご〜〜い〜〜〜」


「え…いや…あれくらいの偏差値ならべつに…」



「ふ〜ん。3年なら大学は?受けるとこ決まってんの?」


「…一応、○○大学の医学、」


「ふ〜〜〜〜ん」



「…。」



 遥輝が困った顔で私に助けを求める。
 私は考えた末、お兄ちゃんに言った。



「ねぇ、この人、ただの友達だから…
 こないだのサラリーマンにしたみたいなことは…
 しないであげて欲しいっていうか…」



 しどろもどろだ。
 お兄ちゃんの沈黙が怖い。
 遥輝は天井を見つめたまま動かない。
 


 地獄のような時間だった。

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