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お兄ちゃんといっしょ
第29章 巻き戻し
 タイセイは、今度は真面目な顔して言った。



「俺たちだけの宝物みたいな秘密だから。絶対誰にも言わない」



 私にしか聞こえないくらいの小さい声だった。
 胸が熱くなる。


 本当は好きって言いたかったけど、電車が次の駅に止まって、たくさん人が乗り込んできたから我慢した。


 ドアが閉まり、また走り出す。
 窓の外の景色に見覚えがある。
 ううん、この駅、この場所に来たことがある。






 私が処女を売った街だ。
 誠太郎という男に…2万円で売った…あの。




 あれは夏だった。
 ほんの半年前の出来事だ。




 街が通り過ぎていく。
 途中、いくつもの有名塾の看板が流れて行き…
 遠くにお兄ちゃんと遥輝の母校が見えた。 
 走馬灯のように、景色がゆっくりと私の視界から消えてゆく。



 
 遥輝は医大に合格するだろうか。



 遥輝におちんこを舐めさせたお兄ちゃんは………。



 タイセイの瞳に写り、流れていく景色を見ながら、私はおばあちゃんちに帰った日のことを思い出していた。




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