この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
お兄ちゃんといっしょ
第29章 巻き戻し
「先生、部屋暑い〜エアコン切っていい?」
タイセイの声で、ハッと我に帰る。
確かに室内は暑い。
マッチ棒みたいに細い先生の体感温度に合わせているらしく、暖房が効きすぎている。
私もニットの袖を捲くり上げた。
肘の内側に貼ったままだった、昨日の止血テープに気付く。
ペリッと剥がすと、裏側のガーゼに付着した血液が茶色く変色していた。
「あれ?採血でもしたの?」
腕を見ている私に先生が声を掛けてきた。
私は先生に頷いてみせる。
「うん。昨日、性病検査に行ってきた。タイセイも一緒についてきてくれたよ」
先生は「へー。そういえば毎週日曜日タダでやってるよね。私も昔行ったことあるよ」と言った。
フリースクールの先生は、学校の先生みたいに「そんな検査が必要になるようなこと、アナタ小学生なのに、一体誰としたの?」なんて面倒くさいことを質問してきたりしない。
居場所があるんだと、今の私は、生まれて初めて感じてる。
「陰性で絶対間違いないって」
私が先生に言うと、先生はまた笑った。
つくづく歯茎が目立つ笑顔。
「良かったね。先生も昔不安なことがあって、その検査のあとはずっとゴムつけてもらってるよ」
先生はいやらしさの欠片もなく、真面目に言う。
ガリガリに痩せた化粧っ気も色気もないこの人でも誰かとセックスすることがあるんだ…と漠然と考える。
そして、先生に言った。
「先生は後悔したことある?」
「あるよ。本当に好きな人…今の旦那様と出会った時、過去の自分を後悔したなぁ。好きでもない人とどうしてあんなことしてたんだろって」
タイセイは聞こえていないふりをして、スラムダンクを読んでる。
だから、私は、噛み締めるように言った。
「じゃあ…好きな人に、どうしてあんなこと…って後悔は?」
その時ドアが開いて「おはようございまぁす」って生徒が入って来たから。
私は咄嗟にドリルをやってるふりをした。
先生はわざと返事をしなかった。
タイセイの声で、ハッと我に帰る。
確かに室内は暑い。
マッチ棒みたいに細い先生の体感温度に合わせているらしく、暖房が効きすぎている。
私もニットの袖を捲くり上げた。
肘の内側に貼ったままだった、昨日の止血テープに気付く。
ペリッと剥がすと、裏側のガーゼに付着した血液が茶色く変色していた。
「あれ?採血でもしたの?」
腕を見ている私に先生が声を掛けてきた。
私は先生に頷いてみせる。
「うん。昨日、性病検査に行ってきた。タイセイも一緒についてきてくれたよ」
先生は「へー。そういえば毎週日曜日タダでやってるよね。私も昔行ったことあるよ」と言った。
フリースクールの先生は、学校の先生みたいに「そんな検査が必要になるようなこと、アナタ小学生なのに、一体誰としたの?」なんて面倒くさいことを質問してきたりしない。
居場所があるんだと、今の私は、生まれて初めて感じてる。
「陰性で絶対間違いないって」
私が先生に言うと、先生はまた笑った。
つくづく歯茎が目立つ笑顔。
「良かったね。先生も昔不安なことがあって、その検査のあとはずっとゴムつけてもらってるよ」
先生はいやらしさの欠片もなく、真面目に言う。
ガリガリに痩せた化粧っ気も色気もないこの人でも誰かとセックスすることがあるんだ…と漠然と考える。
そして、先生に言った。
「先生は後悔したことある?」
「あるよ。本当に好きな人…今の旦那様と出会った時、過去の自分を後悔したなぁ。好きでもない人とどうしてあんなことしてたんだろって」
タイセイは聞こえていないふりをして、スラムダンクを読んでる。
だから、私は、噛み締めるように言った。
「じゃあ…好きな人に、どうしてあんなこと…って後悔は?」
その時ドアが開いて「おはようございまぁす」って生徒が入って来たから。
私は咄嗟にドリルをやってるふりをした。
先生はわざと返事をしなかった。