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お兄ちゃんといっしょ
第29章 巻き戻し
 タイセイとはフリースクールで出会った。
 タイセイは小学校のとき酷いいじめにあった。
 だから体中が傷だらけで…
 きっと心の中もまだ血が乾いてないはずなのに、塞ぎ込んでいた私に寄り添ってくれた。


 私が知ってる男たちの中で、タイセイは一番優しくてまともだ。


 タイセイと私はフリースクールで約半年間ともに過ごすうちに愛情が芽生え…タイセイに告白される形で恋人同士になった。


 優しい人。
 私に寄り添ってくれる人。
 私を大事にしてくれて、私を1番にしてくれる人。


 それなのに、おかしいよね。
 お兄ちゃん、おかしいよね。
 私はおかしいよ。
 なんでなんだろう。
 タイセイを大事にしたいって思ってるのに。
 タイセイに愛されていたいのに。

 

「私が今までにどんなことしてきたか、性病検査行ったときに分かってくれたんだって思ってた。タイセイにだけは、私に言えない秘密があることを分かってほしかった。秘密の内容を打ち明けることが必要だなんて思ってほしくなかった。
 ……けど、タイセイも結局、男のひとだったんだね」



 自分でも何を言っているのか分からない。
 私は泣いてしまいたかった。
 タイセイは何も悪くないのに、心がざわざわして虚しくてたまらない。
 タイセイにだけはエッチが好きかどうかなんて聞いてほしくなかった。誠太郎や遥輝のような穢れのない、私に優しい無垢なタイセイでいてほしかった。



 でもそれって、もしかしたらタイセイが私に見ている虚像と同じようなものなのだろうか?




「ごめん…。
 本当はちゃんと奈々のこと分かってるよ…?
 奈々は嫌々、むりやり、援助交際をさせられたんだよね?」




 タイセイが力強い眼差しで「そうだよね?」とわたしに念を押す。
 まるで「そうだよ」という答えしか存在しないかのように。



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