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お兄ちゃんといっしょ
第4章 第4章
恐る恐る様子を覗いてみると。
玄関先では、突然の訪問を明らかに歓迎していない様子のおばあちゃんに対し、お兄ちゃんらしき男性がにこやかに…いいや。
悪く言えば場違いなくらいのんきに「ばあちゃん元気だった?」なんて挨拶しているところだった。
奥からそろりそろりと姿を表した私に気が付き、お兄ちゃんは何か言おうとした。
しかし、
「龍司。一体あんた、突然なにしに来たの」
とおばあちゃんが言ったせいで私は声を掛けるタイミングを見失ってしまった。
お兄ちゃんは、
「大好きなおばあちゃまに元気な姿見せに来たんだよ」
なんて白々しいことを言いながら、薄汚れた発泡スチロールケースを手渡し、この部位は煮付けがいい、あの部位は塩焼きにしたら美味い、などとニコニコ顔でおばあちゃんにあれこれ説明をしはじめた。
お兄ちゃんは笑うと目が細まって、目尻にくしゃっと皺がより、口からは八重歯がのぞいて見えた。
好感の持てる、愛嬌のある笑顔だった。
そんなお兄ちゃんに対し、おばあちゃんは怪訝な顔で口元に手を当てたまま目も合わせず、黙って俯いていた。
私はどうしていいか分からず、おばあちゃんの背後からその様子を見守ることしか出来ずにいた。
するとひとしきり発泡スチロールケースの中身について説明を終え納得したのか、やっとお兄ちゃんが私の方を向いた。
そして愛嬌のある笑顔を顔いっぱいに浮かべて、穏やかな口調で私に言った。
「奈々だろ?初めて会ったな」
それが私とお兄ちゃんとの生まれて初めての会話だった。
玄関先では、突然の訪問を明らかに歓迎していない様子のおばあちゃんに対し、お兄ちゃんらしき男性がにこやかに…いいや。
悪く言えば場違いなくらいのんきに「ばあちゃん元気だった?」なんて挨拶しているところだった。
奥からそろりそろりと姿を表した私に気が付き、お兄ちゃんは何か言おうとした。
しかし、
「龍司。一体あんた、突然なにしに来たの」
とおばあちゃんが言ったせいで私は声を掛けるタイミングを見失ってしまった。
お兄ちゃんは、
「大好きなおばあちゃまに元気な姿見せに来たんだよ」
なんて白々しいことを言いながら、薄汚れた発泡スチロールケースを手渡し、この部位は煮付けがいい、あの部位は塩焼きにしたら美味い、などとニコニコ顔でおばあちゃんにあれこれ説明をしはじめた。
お兄ちゃんは笑うと目が細まって、目尻にくしゃっと皺がより、口からは八重歯がのぞいて見えた。
好感の持てる、愛嬌のある笑顔だった。
そんなお兄ちゃんに対し、おばあちゃんは怪訝な顔で口元に手を当てたまま目も合わせず、黙って俯いていた。
私はどうしていいか分からず、おばあちゃんの背後からその様子を見守ることしか出来ずにいた。
するとひとしきり発泡スチロールケースの中身について説明を終え納得したのか、やっとお兄ちゃんが私の方を向いた。
そして愛嬌のある笑顔を顔いっぱいに浮かべて、穏やかな口調で私に言った。
「奈々だろ?初めて会ったな」
それが私とお兄ちゃんとの生まれて初めての会話だった。