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お兄ちゃんといっしょ
第5章 第5章
 金縛りにあったように答えられずにいると、オッサンが近付いてきた。
 台車の車輪音が閑散とした市場内にガラガラと響く。
 ゆうべ家を出たときはどんな人生になってもいいと思ったのに。
 近づいて来るオッサンが怖くなった私は正直に、


「○○水産ってとこ探してます」


 と、恐る恐るオッサンに告げた。
 オッサンは眉間に皺を寄せた。


「○○?○○水産だな?」


 黙って頷く。


 するとオッサンはしゃがれた声で「入り口入ってすぐの、ずっと奥の方にあるからな。あぶねぇから、早く帰んだぞ」と教えてくれた。


 アスファルト敷の通路はあちこち水たまりが出来ていて、歩くたびにピチャピチャ足音が鳴った。


 足音に混じって男性の話し声が聞こえてきた頃、お兄ちゃんの店の看板が見えた。


 薄暗い空間に若い男性が2人で話しをしている姿が、白熱灯の明かりに照らされていた。

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