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お兄ちゃんといっしょ
第8章 第8章
 シャワーを終えて浴室を出ると、バリカンの音が聴こえた。
 見ると、キッチンの流し台の前で、お兄ちゃんが手鏡片手に髭を整えているところだった。


 揉み上げから顎髭は綺麗に繋げて、鼻の下の髭は唇の幅だけ残す。
 そして口角の横んとこは顎髭と繋がらないようキッチリ剃り落とすのがお兄ちゃんのスタイル。


 長い前髪はかき上げていて、ここ最近隠れっぱなしだったお兄ちゃんの形の良い真っ直ぐの太い眉が、珍しく露わになっていた。



「なに食いたい?」



 髭の手入れに夢中になりつつも、お兄ちゃんはやっぱり私の機嫌を取りたいらしい。


 髪の毛をバスタオルで拭きながら、流し台に立つお兄ちゃんのそばに近付く。
 シンクの上に置かれた灰皿には、吸いかけの煙草が放置され、白い煙を上げていた。


「魚がいい。市場の近くの。お兄ちゃんが美味しいって言ってたとこ」


 煙草を手に取り、唇のあいだに挟む。 
 思い切り肺の中に吸い込みながら、お兄ちゃんの身体に肌を寄せる。
 口の中が痛い。
 白い息を吐き出すと、頭がくらくらした。

 
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