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第14章 扉の向こう側 ―背反、或いは排反―

耿輔のマンションは駅から歩いて10分チョイのところにある。

今まで、そこに行ったのはホンの数回ほどの筈なのに、言いようのない心地よさを感じるのは何故だろう。ここにヤツが居るから…そんな軟派な理由には納得出来ないけど。

エントランスホールのセキュリティを抜けて耿輔の住む部屋へと急ぐ。電話番号は登録してないくせに、マンションへ入る暗唱番号は覚えてる。

俺も相当捻くれ者だ。

501号のドアの前まで来ると、ふと初歩的な疑問にぶつかった。

(ところで、ヤツは部屋に居るのか?連絡もせずに来ちゃったけど…)
 
…って、連絡…?
そのときになって、携帯を忘れてきたことに初めて気付く。

早く着くことだけに夢中になってて、携帯のコトまで気が回らなかった。これじゃ、たとえ不在でも、ヤツの居所を確かめることすら出来ないじゃないか。どこまで抜けてるんだか…

”ハァー”思わず吐息が漏れる。
 
不在だったら、単なる間抜け。
もう、帰りの電車もない、どうしよう…
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