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第14章 扉の向こう側 ―背反、或いは排反―
呼び鈴を押す指が一瞬止まったが、このままドアの前でボーっとしていても仕方ないので、一呼吸おいてから覚悟を決めてブザーを鳴らした。
直ぐには返事がない。ちょっと不安な気持ちが過ぎる。
(もしかして留守…?)
思い切ってもう一度押してみようとしたとき、俺の方に勢いよくドアが開いた。
「…わざわざ、声…聞かせに…来たのか…」
そこには、掠れた声で憎まれ口を叩く耿輔がいた。
いつも通りのクールな微笑みを浮かべて、努めて平静を装っているけど、俺には分かる。
生彩のない瞳、早い呼吸に小刻みに揺れる肩。
酷く具合が悪そうだ。
それなのに、そんな風に虚勢を張ってる耿輔が俺は堪らなく愛おしかった。
「おまえが、間違い電話なんか掛けてこなけりゃ俺だって…」
締まるドアの内側で、俺の躯は耿輔の胸に抱き寄せられる。重ねたヤツの躯が火のように熱い。いつも不貞不貞しい限りの耿輔が、今日は見る影もなかった。