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第3章 喉元過ぎれば、悪夢を忘れ ― 序章―
寝ぼけ眼に携帯を押しつけて番号を見る。登録していないナンバー。

一体誰だ?

今朝は早くから携帯のけたたましい着信音で起こされた。きのうバイトが遅かったのに、こんな朝早くから叩き起こされて、俺の機嫌は最悪だ。ついでに体調も余り良好とは言えない。

それもこれも、あのくそ親父のせいだ。未だに仕送りを送って来ないなんて、何考えてんだ。大事なひとり息子を餓死させるつもりか?

それとも、親父になにか有ったのか?

な、訳ないだろ。あの親父に限ってお陀仏することなんて考えられない。昨日の対談番組は録画だとしても、死んだという話は未だ聞いてない。親父があっさり死ぬような人間じゃないことくらい息子の俺が一番よく知っている。

生身にしてはタフ過ぎる身体に、もしかしたら人間ですら無いかもしれないという懸念さえ持っているくらいだ。

にしても…遅すぎる!!

すでに月の10日になろうというのに、未だに梨の礫だ。
お陰で俺は連日バイトの掛け持ち。出来るだけ実入りが良くて、日銭が稼げる仕事。
昨日も、野外コンサートの設営に夜中の11時過ぎまで関わっていた。全部終わってアパートに帰って来られたのは日付が変わった1時近く。それから飯喰って、風呂入って、髪も乾かさずにベッドに倒れ込んで気が付いたらいつの間にか寝ていた。
 
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