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第3章 喉元過ぎれば、悪夢を忘れ ― 序章―
にしてもだ…たった1時間で2万も払ってくれるバイトって…魅力的だよな。

勿論恐い気もするが…。まさか本番をやらされるんじゃ…その割りには裸は無しだって言ってたからな。

コストパフォーマンスの高さに魅力を感じながらも、内容の曖昧さに一抹の不安を抱いて躊躇する俺を急かすように、相手が畳み掛ける。

「駄目って言わないってことは、OKってこと…?だよね。じゃ、これから迎えに行くから」

「あ、まだ受けるって誰も言ってない…困ります…俺に出来るような仕事じゃないかもしれないし」

困るよ。
時給を考えれば、このあいだ以上にエグイ仕事に決まってるじゃないか。
コウのことはちょっと気になるけど…。

”コウもノリノリ”ってことは、あいつも俺のこと気に掛けてるのかな…そう言や、あいつ俺に、”付き合わないか?”って聞いてきたっけ。

…ヤなこと思い出しちまった。
何でノンケの俺が、”男”の耿輔を気にしなきゃならないんだ。

おかしくないか?明らかにおかしい!

単純な論理矛盾を突かれて、ただでさえ眠気で朦朧とした俺の頭は混乱で一層朦朧としてくる。自分の主張をハッキリさせようと、言い淀んでいる隙に当の自分には全然関係なく、話はドンドン先へと進んでいた。
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