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第6章 記憶の淵から ―refrain―
にしても…ホントに静かだ。耳を澄ましてみても、やはり生活音は聞こえてこない。
(俺ひとり…なのだろうか…?)
耿輔はやはり事務所へバイト料をもぎ取りに行ったのか。そして、亨(とおる)って言ったっけ…あいつの弟も何処かに出掛けているのか。
誰もいないあいだに、勝手に帰ってしまおうか
(でも、流石に、”この成り”じゃなぁー…)
身につけているものを振り返って、俺は溜息を吐いた。
耿輔が俺に着せてくれたのは前ボタンの薄手のパジャマ。俺のサイズとそれ程違わないところを見ると、弟のモノなのかも知れない。耿輔のだったら明らかにデカイはずだから。
こんな恰好で外を歩いたら、不審な目で見られることは間違いない。一足早い夏の陽気に当てられたと思われても仕方ない。みんなの好奇の目に晒されながら、下宿まで帰る気力は今の俺には無かった。