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第6章 記憶の淵から ―refrain―

勝手に帰ることが許されないとなれば、腹を括ってもう暫く誰かの帰りを待つしかない。

諦めの気持ちで外を眺めると、そこにはカーテンと同じように蒼い風にそよぐ洗濯物があった。ベランダの物干し棹に掛けられた洗濯物は、風にそよいで如何にも気持ちよさそう。

真ん中辺りでユラユラしているジーンズは俺のだろうか?直ぐ傍に白いシャツや…見覚えのある下着もぶら下がっているところから、多分そうだ。朝の内に洗濯したとすれば、もしかしたら乾いているかも。

いや、幾らなんでもまだ無理か…
 
(って言うより、誰が干したんだよ…)

思わず俺はパンツを手にして、ニヤケまくっている耿輔の姿が思い浮かんで頭を抱えた。

余計なことすんなよ!

あぁ、もうヤダ…何であいつなんだ。よりにもよって…

本日この同じフレーズを何度呟いたかわからない。

どうしようもなく凹んだ気持ちは、蒼い風に吹かれて誇らしげに揺れている俺のパンツとはかけ離れたところにあった。
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