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第6章 記憶の淵から ―refrain―

”はぅっ…”俺は深い吐息をひとつ吐(は)く。

それでも耿輔は良くやってくれたって…?

放っておくこともできたのに、俺をココまで運んで介抱してくれた事に感謝しなきゃ。
…などとは、とても思えなかった。
寧ろ、放っといてくれたほうが良かったのに。

どうせあそこまで達ったのだから、最後まで終わらせてサッサと事務所にでも引き渡してくれれば良かったのだ。カネさえ貰えればそれで奴とは何の関係も無くなったはずなのに。

それなのに、どうして耿輔にここまで面倒見て貰わなきゃならないんだ。

奴にあんな痴態を見られたことが俺の心を塞ぎ込ませる。耿輔に縋ったことは俺のプライドを深く傷付けていた。

取り乱す俺を、どうしようもないほどの優しさで包んだあいつを拒めなかった自分…
 
俺の躯(からだ)が奴の温もりを求めているだなんて、認めたくなかった。

そう、そして更にその先を求めているなんて…

断じて認めたくなかった。

そんなの認められない…だって俺には親父みたいな趣味は無いのだから。

(そうだろ…固望(モトミ)…)
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