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第6章 記憶の淵から ―refrain―

合宿最終日のその日は、微熱といつもと違う疲労感のために午後のメニューを早めに切り上げてシャワーを浴びた後、ひとり部屋で休むことになった。夕方からは咳まで加わって最悪の状態。
薬を飲むのは気が進まなかったけれど、同じ部屋の先輩から勧められた錠剤は速効で鼻づまりと咳を楽にしてくれた。
 
だが、もう少し疑ってみるべきだったのだ。

指示通りの処方では、明らかに量が多すぎるのではないかと。間を置かずに6錠。一度に摂取しなかったことで楽観的になっていた自分。

その後、程なく現れた動悸と目眩、異常な発汗が薬のせいだと気付くのにそれ程時間は掛からなかった。

気管支を拡張して咳を抑えるクスリは、交感神経になんらかの影響を与える。その為にこのような副反応が生まれることを以前から知っていた。これって、ダイエットとかで一時有名になった話だから。
 
俺の間違いでなかったら──
処方されたのは『エフェドリン』。

以前から気管支拡張剤としてあったのものだが、基礎代謝を高め、脂肪蓄積を阻止するということで、ダイエットサプリとして一躍有名になったクスリ。でも、その反面、長期連用、摂取過多に伴う危険が言われ続けてきた。
 
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