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17歳の落書き
第2章 藤田先生と千晴の結婚生活 ~久しぶりのデート~
雑木林の脇を通り抜け、コンクリートの古い外壁が見えた。
ここは、体育館裏。
「ここ、体育教官室あったよね。体育倉庫も」
「よく覚えてるな」
ここから、怒鳴ってる姿も見た。
体育倉庫では、思い出が詰まってる。
セーラー服を着ていたあの頃の、必死で、純粋で、狡くて、全部むき出しで、ひり付いていた気持ちが、強く甦る。
あの頃、私は、ここで確かに、全力で恋をしていたのだ。
私は、夢中で窓ガラスにひっついて外を見ていた。
大きなグラウンドは潰れていたけど、サッカー部のグラウンドは健在だった。
「こっちのグラウンドはまだある…涼太たち、扱かれてたなぁ…」
「俺にか」
当時の鬼コーチが笑う。
車は、そのまま走り続け、公園を横切り大通りに出た。
私は窓から離れて助手席に座り直して、隣で運転する愛しい人を見た。
その人は満足げに微笑み、私を見つめ返す。
あの頃の切なく爽やかな風が、心の中に残る。
あんなに好きだった先生が、今ここにいるなんて。
私と共に人生を歩んでいるなんて。
今、当たり前になっていた日常は、けして当たり前ではなかった。
藤田先生と結婚するなんて、当時の私が知ったら驚いただろうな。
「哲さん、連れてきてくれてありがと…」
昔を懐かしんで、タイムスリップしたような気分になって、隣で静かに微笑む先生に心をときめかせた。
「……じゃあ、次はどこに行くかな」
先生がハンドルを切った時、ひとつの提案をした。
「あのね。行ってみたいところがあるの」