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17歳の落書き
第2章 藤田先生と千晴の結婚生活 ~久しぶりのデート~
15時の幼稚園バスのお迎えまで、あと5時間。
隣でハンドルに乗せる腕は逞しく、日に焼けている。
信号待ちになると、その手が、私の膝にあった手を包んだ。
「…………」
……あったかい。手のひら。
何か言おうとしたけど、先生の顔は向こうを向いてしまっていて、どんな表情をしているかわからないし、ここで無粋な発言をするのも気が引けた。
せっかくのふたりきりの時間。
先生は今、惺のママじゃない「私」として扱ってくれている。
青信号に変わると、するりと手が離れた。それを追いかけようとしたけれど、また自分の手を膝の上に戻す。
そして、過ぎゆく風景を見て、先生が向かっている場所がなんとなく思い当たる。
「哲さん……」
「何だ?」
優しく低く響く声。
「この道って……翠学園?」
そこの筋を曲がれば碧の家だし、そこから少し行けば公園があるはずだ。
そして、道沿いに翠学園高校がある。
先生は「よくわかったな」とにこりと笑う。
私にとっての翠学園は懐かしい母校だけど、先生にとって、けしていい思い出ばかりじゃないはず……。
現に、私と先生が再会してから、翠学園に立ち寄ることは皆無で、もう、二度と近寄ることのない場所だと思っていた。
「見れば懐かしいんじゃないかと思ってな。あの頃からいろいろ変わっていくよ。スポーツ科は今年で終わりだそうだ」
「そうなんだあ……」
「少子化だからな。どこの学校も大変だ。特に私学は」
どこか懐かしむように優しく話す先生。
私にとっては、先生と出会った運命の場所。
「前を通ってみるか」と、先生はアクセルを踏み込んだ。
隣でハンドルに乗せる腕は逞しく、日に焼けている。
信号待ちになると、その手が、私の膝にあった手を包んだ。
「…………」
……あったかい。手のひら。
何か言おうとしたけど、先生の顔は向こうを向いてしまっていて、どんな表情をしているかわからないし、ここで無粋な発言をするのも気が引けた。
せっかくのふたりきりの時間。
先生は今、惺のママじゃない「私」として扱ってくれている。
青信号に変わると、するりと手が離れた。それを追いかけようとしたけれど、また自分の手を膝の上に戻す。
そして、過ぎゆく風景を見て、先生が向かっている場所がなんとなく思い当たる。
「哲さん……」
「何だ?」
優しく低く響く声。
「この道って……翠学園?」
そこの筋を曲がれば碧の家だし、そこから少し行けば公園があるはずだ。
そして、道沿いに翠学園高校がある。
先生は「よくわかったな」とにこりと笑う。
私にとっての翠学園は懐かしい母校だけど、先生にとって、けしていい思い出ばかりじゃないはず……。
現に、私と先生が再会してから、翠学園に立ち寄ることは皆無で、もう、二度と近寄ることのない場所だと思っていた。
「見れば懐かしいんじゃないかと思ってな。あの頃からいろいろ変わっていくよ。スポーツ科は今年で終わりだそうだ」
「そうなんだあ……」
「少子化だからな。どこの学校も大変だ。特に私学は」
どこか懐かしむように優しく話す先生。
私にとっては、先生と出会った運命の場所。
「前を通ってみるか」と、先生はアクセルを踏み込んだ。