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優しいヒトに虐められてます。
第13章 雨と美術館
「あぁ……やっぱり斎藤さんを誘ってよかった」
一言そう言うと、彼は取り憑かれたように真剣な表情で
他の絵画を見て回った。
その後建物を出るまで、一度も彼は口を開かなかった。

「斎藤さん。今からうちに来てくれない?」
鑑賞を終えて外に出たところで、突然古田が言った。

「先に言っておくけど、変なことはしない。
ただ、今インスピレーションが湧いてきてるんだ。
早くしないと消えちゃう。
斎藤さんにも来てほしい。
君の絵を描かせてほしい」
彼は早口にまくしたてた。

「え……私の絵……?」
「ダメなら別にいい。そのまま君を描く。
来てくれる?」
「絵を……描いてくれるだけなら……」
「よし、急ごう」

古田は何か変なスイッチが入っていた。
ハルの手を引っ張り、傘も差さずに
早足で駅へ歩き出した。
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