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優しいヒトに虐められてます。
第13章 雨と美術館
やがて、彼が「チッ」と舌打ちした。
思うように描けないのか、筆を床に打ち付ける。
カンッ、と音がして筆が跳ねた。

こ、こわぁ……この人こんなに怖くなるの?
早く帰りたい……

「斎藤さん、悪いけど
上だけでいいから服脱いでくれない?」
感情のこもらないトーンの低い声。

イヤです、と素直に言う勇気はなく…
「そ、そういうのはちょっと……」
控えめながらも、しっかり拒絶する。

「まあそうなるか」
苛立っているのかわからない様子で立ち上がり
ハルは思わず身構えた。
が、彼はハルの横を通り過ぎて
壁際の引き出しを開けた。

中から取り出しハルに差し出してきたのは――
「はい。これくらいでどう?」
彼の手の中には、諭吉さんが五人いた。
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