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第13章 雨と美術館

ハルは古田と一定の距離を保つように
彼が近づくたびに後ろへ下がった。
そして、当然だがすぐにかかとが壁を蹴った。
もう逃げ場がないことを知り、焦りと恐怖で
思考が回らなくなる。

「おい」
今まで穏やかだった古田とは思えない険悪な表情で
彼は口を開いた。
「そっちには行くな。ほら、逃げたいんだろう？」
彼が玄関への通り道から身体をどけた。

「もし絵に傷をつけたら……」
彼はその先を続けなかった。
あえてそうしたのか、それともまだ考えていたのか
いずれにしろ、彼の激情に触れるわけにもいかなかった。

ハルは数歩前に歩いて絵の傍を離れた。
「向こう向いててくれませんか」
ハルは勇気を振り絞って言った。