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優しいヒトに虐められてます。
第15章 彼のとっておき、そして・・・
「ハル、泣いてるの?」
ちょうど身体全体にオイルを塗り終わったところだった。
嗅いだことのない、いかにも媚薬然とした独特の匂いが
鼻孔から脳へと浸透していく。

ハルはとっさにバングルをつけた腕を背中に隠した。
アイマスクをしていて目元は見えないはずなので
その判断はバングル経由に違いない。
まあ泣いているのは心だが。

「バングルなんか見てないよ」
その声はまっすぐハルの顔の方へ飛んでくる。
「じゃあ、何でそんなこと聞くの」
「今日はいつにもまして強がるね。
何でそんなこと聞くの、じゃなくて
何でわかるの、でしょ?」
「……別に泣いてないもん」

「日頃から僕がどれだけハルのことを
観察してると思ってるの?
バングルなんか見なくたって、目が見えなくたって
ハルが泣いていればわかるよ。
その証拠に、今ハル、バングル隠したでしょ?
それに今だって、泣いてない『もん』、って。
ハルが語尾に『もん』をつける時は強がってる時だから」

ハルはアイマスク越しに、まぶた越しに彼を見た。

そこまでわかってるなら……
ちゃんと全部察してよ……
あーあ……アイマスク染みてきちゃう……
我慢してたのに。
全部トウキくんのせいだ。
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