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優しいヒトに虐められてます。
第17章 恋人
トウキもハルも、料理には疎い。
ほとんど同棲状態なのに毎日二人で弁当やインスタント
または外食という状況は、さすがにマズいと思った。

ハルは栄養面には気を遣っているためか
あまり気にしていない様子だったので
仕方なくトウキの方から声をかけた。

「ねえ、ハル。一緒に料理の勉強しない?」

ハルは食事の手を止めて、顔を赤くした。
それから「うん……」と頷いた。

ハルの心理を7割察知できるトウキには
その反応だけで十分だった。

恋人と生活する上で、栄養や金銭面のために料理を始めるという
家庭的な女子としての選択肢が思いつかず
スーパーやコンビニの総菜をパクパク食べていた自分の
女子力の低さにふと気づかされて、恥ずかしくなったのだ。
――おそらく。

そんなわけで共に通い始めた料理教室。
信じられないことに、ハルの料理における才能は
絶望的で、まだ幼稚園児に簡単な指示を出した方が
役に立つくらいだった。

今後、もしハルの実家に挨拶に行くことがあれば
そのことについて追及させてもらうことに決めた。

その後分担することになったハルの家での家事は
当然だがトウキが料理・買い出しを、ハルが掃除・洗濯を
それぞれ担当することになった。

そんなこんなで慌ただしかったせいか
気付けばあっという間に月日が過ぎていた。
まさに光陰矢の如し。

そして訪れた禁欲恋人生活(仮)の最終日。
トウキの方からハルをデートに誘い
ちょっと財布を緩めて贅沢なディナーを堪能した。

ハルの誕生日でも来ればプレゼントでも渡せたのだが
ハルの誕生日は春先だという――春だけに。
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