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Quattro stagioni
第2章 今宵は、新しいシーツの上で
「……さん、志保さん」
優しい声と肩を揺する感触で目を開いた。煌々と電気の点いた新居のリビング。大音量でつけていたテレビは消えている。微睡む声は自然と彼を呼ぶ。ただいま、と微笑んで私の頭を撫でてくれた。
「……おかえり」
「なんでこんなとこで寝てるんですか。あ、ご飯、ちゃんと食べてないですね。ダメですよ、缶チューハイに栄養ありませんからね」
「……ん」
なんだ、帰ってきてくれたのか。無性に嬉しくなって眠たい頭のまま藤くんに縋りつく。ぎゅうっと強く抱き着くと、もう、と小さく言って私を抱き締め返してくれる。
「寂しかったの?」
幼い子供に語りかけるような声。ふるふるとかぶりを振ると微かに笑う。ずるずるとソファーから降りて、彼の足の上へと移動する。ちゅ、と頬にキスをしてくれた彼は私が満足するまで動かずに居てくれるらしい。
「かわいいなぁ、もう。寂しかったなら寂しかったって言ってくれたらもっとかわいいですけど」
「……寂しくない」
「じゃあなんでこんなに俺にしがみついてるんですか。襲いますよ」
笑い交じりに言って、背中を撫でた手は尻を掴む。いやいやをして藤くんの腕から逃れた。距離を取ってラグの上にしゃがみ込むと胡坐をかいた彼はにんまり笑って手招きをする。嫌な予感。近づけば服を脱がされるだろう。
「風呂、入りましょっか」
「もうシャワー浴びたからいい。寝る」
「志保さんと風呂入りたい一心で帰ってきた俺にその冷たい仕打ち……涙でそうですよ」
大きな両手で己の顔を覆って嘘くさく、ぐすぐすと泣いて見せる。いやいや、口で言ってるじゃないか。
「…お父さん、大丈夫だったの?」
「倒れたって電話だったんですけどただのぎっくり腰でした。久々に顔見せたからなのか中々帰らせてくれなくて…」
泣き真似はさくっと辞めたらしい。おいでおいで、と再び手招きをされ気配が変わったことに安堵しながら彼に近づく。足の上に横向きに納まった。触れるだけのキスをして抱き締めてくれる。