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Quattro stagioni
第11章 スタンダールの幸福 Ⅵ

「あれ?まだ着替えてなかったの?」
「都筑さん、美月ちゃん恋煩いみたいですよ」
「お、おう…そっか…えっと、そういうのは私の守備範囲では…」

はは、と乾いた笑い声を上げて都筑さんが豪快に服を脱ぎ始める。すらりと引き締まった薄い身体。思わず見てしまった。

「あ、あの、都筑さん、」
「んー?」
「……都筑さんって藤さんと付き合ってるんですか?」
「うん、そうだよ」
「あれ?都筑さん、箝口令はいいんですか?」
「いいって。だって美月ちゃんなら部長と村澤さんみたいに所構わずいじってこないでしょ」

隠しているようだったからはぐらかされるかもしれないと思いながら聞いたのに、都筑さんは思いの外あっさりと答えた。ミヤコさんも意外だったようで水着へと着替えながら、箝口令はいいのか、と言った。どうやら都筑さんが藤さんとの関係を伏せているのは部長と村澤さんが原因だったらしい。

「藤くんは、ダメだよ。私のだから」
「都筑さんがそういうこと言うとか意外です」
「あはは。だよねー、ちょっと藤くんの真似してみた」

ミヤコさんの言葉に、宇宙みたいな柄の水着に着替えた都筑さんは髪を纏め上げながら笑った。普段は凛と美しい大人の女性である彼女の影に子供っぽい無邪気さがちらつく。無性に、素敵だなぁ、と思った。

「わたしが、好きなのは中原さんです」

胸の中には悔しさに似たなにかが広がっていた。勢いに任せて言うと都筑さんもミヤコさんも大きく目を見開いてわたしの方を向く。

「ま、まじで?」
「……ま、まじです」
「そ、そうか…浩志か…」
「でも、中原さんが好きなのは都筑さんなんですよね」
「うーん、それは話すと長くなるけど…」

そう言いながらも都筑さんは昨年のことを簡単に話してくれた。人として中原さんのことをとても大切に思っていることが痛いほど分かった。
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