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Quattro stagioni
第11章 スタンダールの幸福 Ⅵ
◇◆
「…私は今日は藤くんのご機嫌を取りたいと思います」
朝食の時間に遅れてしまうからとミヤコさんとふたりで悪戦苦闘して都筑さんを起こした。まだまだ寝ぼけ眼の都筑さんはのそりと起き上がってベッドに正座をするなり言う。
昨晩、わたしがなんとなく目を覚ましたとき、都筑さんの姿はベッドになかった。部屋はしんと静まり返っていてシャワーを浴びている訳でもトイレを使っている訳でもないようで、どこへ行ったのかなと思っているとドアの開く音がして慌てて寝たふりをしたのだった。
都筑さんが静かにベッドに潜り込んですやすやと眠り始めてからわたしはそっと部屋を抜け出した。どうしてあの時、外に出てみようと思ったのかはよく分からない。
それに、昨晩、わたしは、
「じゃあ、私が責任持って清水連れて帰りますよ」
「お、流石ミヤコちゃん、ナイスアシスト」
「ってことで、美月ちゃんは中原さんとデート楽しんで!」
「えっ」
「いっそさ、告白しちゃいなよ」
にっこり笑顔のミヤコさん。実は昨晩、なにかに突き動かされるように告白をしただけでなく、勢い余ってキスまでしてしまったなんて言えない。その上、ホテルまで中原さんの手を引いて戻り、部屋の前で別れ際、本気ですから、と念を押した。
これまで以上に中原さんの前でどんな顔をすればいいのか分からない。ふたりきりになんてされてしまったら、わたしはかちこちに固まってしまうだろう。
「つ、都筑さんと藤さんは別行動で、わたし達は4人で観光しませんか?」
「なんで?いい機会だしふたりで楽しんできなよ」
もたもたと私が言うと、ミヤコさんはきょとんとする。ようやく覚醒したらしく、身支度を整え始めた都筑さんに視線を逃がした。それに気づいた彼女もミヤコさんと似たような表情をする。