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Quattro stagioni
第11章 スタンダールの幸福 Ⅵ

とりあえず朝食後のことは男性陣と合流して食事を済ませてからにしようということになった。早くコーヒーが飲みたいという都筑さんの先導で、ホテル1階のレストランへ向かう。

ロビーの一人がけのソファーでは藤さんが新聞を読んでいた。後頭部の寝癖そのままの清水くんは売店をうろちょろしていたようでわたし達が下りてきたことに気付くと近寄ってくる。

「藤くん、浩志は?」
「これですね」

都筑さんが藤さんに声をかけると、彼は手元を動かしてなにか示した。わたしの位置からはよく見えない。でも、都筑さんは納得したようで、ああ、と言いながら彼女の腰を抱こうとする藤さんの腕を抓った。

数分と経たず、中原さんが姿を見せる。欠伸交じりでまだどこか気怠そうだ。なんだかどきどきしてしまう。浮いた心地で見ていると彼の目がわたしを捉える。

「…!」

思わず、逸らしてしまった。俯いて、背中を向ける。お腹が空いたとレストランへ入っていくミヤコさんに続こうとすると隣に人の立つ気配。ふわりと煙草の匂い。ああ、そっか、さっきの藤さんのジェスチャーは煙草を吸いに行ったことを示していたのか。

「おはよう」
「……お、おはよう、ございます」

顔を上げられない。あれ?なんで、中原さんはいつも通りなのだろう。本気だと言ったのにやっぱりわたしがからかっているだけだと思っているのだろうか。

む、と見上げると中原さんの背はレストランに吸い込まれていく。追って入ると、6人掛けのテーブルに通された。朝食は和食と洋食、どちらも充実したブッフェスタイルだ。大体どこのホテルでも同じような内容だろうと思っていたけれど、お冷がフルーツウォーターになっていたり、ヨーグルトやシリアルの種類が豊富でちょっとテンションが上がった。
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