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Quattro stagioni
第11章 スタンダールの幸福 Ⅵ
次々と空に放たれていく数千発の花火の後は、15分ほど間が空くようだった。余韻そのまま惚けていると中原さんが小さくわたしを呼ぶ。繋いだ手に力がこもった。わたしも指先に力を込める。
「俺はさ、お前が知ってる通りずっと都筑のことが好きだった」
「……はい」
「やっと…やっとケリがついたとこで…なんつーか、お前が気持ち伝えてくれたことは嬉しかったけど、今はまだそれに応えてやれないと思った」
「………」
「だけど…この休暇の間、自分でも不思議なくらいお前のこと考えてた。どっかで遊んだりしてんかな、とか、飯食ってっかな、とか……」
そこまで言って彼はゆっくりとわたしの方を振り返る。2度目の打ち上げ開始が迫る中、辺りの明かりが抑えられている所為で表情はよく見えなかった。
「正直、色々自信ねえけど…でも、今日、お前の声聞いて、顔見て、そしたらなんか、ほっとしたんだ…だから、」
「それって…わたしのこと、好きってことですか…?」
「………ほぼ」
「ほぼ?なんですか、それ。ちゃんとしてください」
「あー、うるせえ。だから、ちゃんとするからもう少し待ってくれって意味で、」
「そんなに、待てませんよ。わたし、気長くないですからね」
「…わーったよ」
飾らない言葉だな、と思った。ぽかぽかと胸があたたかくなる。繋いだ手にもっともっと力を込めると、いてーよ、と笑い声。好きです、と言えば、はいはい、と返ってくる。
程なくして、第2部の打ち上げが始まったけれど、殆ど集中出来なかった。花火が上がる度に暗い中に浮かび上がる中原さんの横顔ばかり見ていた所為だ。わたしが見ていることに気付くと、花火観ろって、と眉を顰めた。その顔は結構かっこいい。