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Quattro stagioni
第12章 スタンダールの幸福 Ⅶ♡
◇◆
薄く目を開くと、まず、穏やかな寝顔が視界に飛び込んできた。ああ、そうか、昨日はついにこの腕に美月を抱いて、興奮冷めやらぬまま眠ってしまったのだった。
ベッドに広がる黒髪をそっと撫でる。静かに寝息を立てる姿をぼんやりと見ていると美月が気怠そうに目を開いた。まだ寝ぼけているのかむにゃむにゃとなにか言っている。
「……へへ…おはよう、ございます」
「ああ、おはよう」
ふふ、と笑い声を上げて俺に縋りついてくる。抱き寄せて、額に口づけた。恥ずかしいと顔を赤らめる。昨晩はこんなことよりも恥ずかしいことをしたじゃないかと思うが口には出さない。
「…昨日、」
「ん?」
「昨日、あの後好きって言ってくれなかったですよね」
「……そうだっけか」
「そうですよ」
ねえ、とねだる声。やけに大人びて聞こえる。好きだよ、とそう言った声は寝起きの所為か少し枯れていた。もっと、と我侭を言う様が愛おしかった。
「好きだ、美月」
「嬉しい」
これ以上くっつけないくらい縋りついているくせに更に身体を寄せてくる。ああ、くそう。挑発しやがって。腕を掴んで勢いよく体勢を変えた。覆い被さるような形になると微睡んでいた顔に驚きが広がる。唇を重ねれば、小さな手が俺の肩に触れる。
「……っ」
「どうしたんですか?」
「…いや、」
美月の下半身を跨いでベッドに突いた膝。両足が震え、腰に痛みが走る。久しぶりの行為の弊害だ。はあ、と深く息を吐いて身体の力を抜いた。ぼすんと身体を預けると、重いですよ、と笑い交じりの高い声。
「……腰が、やばい」
「えー、おじさんみたい」
寝返りを打って、仰向けになる。笑いながら起き上がった美月が、頬にキスをしてきた。腰を抱いて、引き戻す。大人しくなったかと思えば、ぺたぺたと腹を撫でてくるから手を掴んで辞めさせた。