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Quattro stagioni
第12章 スタンダールの幸福 Ⅶ♡
暫くの間、ベッドの上でじゃれ合った。悪戯にキスをして、お互いの身体に触れあう。ただ、それだけで胸の奥底から安堵が身体中に広がっていく。
「凄いな、お前…ほんと、いつの間にか俺の中に居場所作ってる」
髪を撫でながら言うと美月は頬を膨らませた。リスのようだ。膨らんだ頬をつまむと、唇をすぼませ、眉根を寄せる。これは中々不細工な部類に入るが、それすらも可愛く見えるのは惚れた弱みでしかないだろう。
「あなただって、いつの間にかわたしの心、持っていったんですよ。責任取ってください」
「はいはい、取りますよ」
「雑ー!」
「ちゃんと、取るよ。だから俺の傍に居てくれ」
弾んだ声が、はい、と答える。こんなにも幸福な朝を迎える日が来るなんて、こいつが配属された日には欠片も想像しなかった。あの日、何故、美月の中に都筑の面影を感じたのかはやはりよく分からない。
「ね、我侭言っていいですか?」
「…もう1回とかはマジで無理」
「エッチ!そうじゃないですよ」
「……なんだよ」
「バイク、後ろ乗りたいです」
「そんなことでいいのか」
「はい。行くのはどこでもいいです。近くでも、遠くでも、」
「お前の行きたいところでいいよ」
喜んでくれるなら、笑ってくれるなら、どこにだって連れていく。のそりと起き上がると案の定、腰に違和感があったが、からかわれるまいとぐっと堪える。
交互にシャワーを浴びてから簡単に朝食を取った。俺がシャワーを浴びている間に美月がコーヒーを淹れてくれていて、つい、脳裏や喉の奥に都筑の淹れた濃くて苦いコーヒーの味が甦ったが、湯気の立つコーヒーを一口飲めばそんなものはさらさらと消えていった。