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Quattro stagioni
第3章 リングサイズ調査作戦
◇◆
「……藤くん、なんか企んでない?」
不審そうな顔で言われ、思わずぎくりとする。色々と鈍いところがあるというのに、今は辞めてくれというところで鋭い人だ。
自宅マンションの最寄駅で待ち合わせて、駅近くで簡単に夕食を取って帰宅。引っ越してからまだ3日の新居。ついさっきまで私が先に鍵を開けたいと楽しげだった志保さんは俺を探るような目で見ながら冷蔵庫を開けている。
無理もない。カウンター席に座って食事を取りながらやたらと彼女の手ばかり見ていたのだ。触れて指を撫でると、こそばい、とちょっと怒った顔もかわいかった。
「企んでるように見えます?」
「企んでるようにしか見えない」
警戒モード。ソファーに座って、手招きをするが中々こちらへは来てくれない。ミネラルウォーターのペットボトル片手にじっと俺を見てないで今すぐ隣に座ってくれないものか。
「こっち来てください」
「なに企んでるか白状する?」
「……なにも企んでないですよ」
「今日は猫やんないよ」
「分かってますって。それは週末」
ね、と言いながら再び手招きをするとゆっくりとこちらへやってくる。腕を引いて抱き寄せて、首筋に鼻先をうずめる。甘ったるくて優しい匂い。柔らかな肌。ぺろりと首筋を舐めれば微かに身体を震わせる。
「ちょ、ね、なに?」
「ん?充電してるんです」
頬にキスをして、自分の足の上に志保さんを座らせる。体勢を整え後ろから抱き締めてから彼女の左手に触れる。小さな、手。細い指。短く切り揃えられた爪すらも愛おしくて堪らない。
「志保さん、あのブレスレットどうしたんですか?」
「クマ子のネックレスにしてあげた」
にこりと笑ってリビングの棚に飾られたクマのぬいぐるみを指さす。彼女の言葉通り、旅先で俺が購入したバロックパールのブレスレットはぬいぐるみのネックレスに変化している。最近つけていないと思っていたが、いつの間にぬいぐるみに装着させていたのだろう。ちなみにクマ子はチカさんからお土産で貰ったものらしい。