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Quattro stagioni
第3章 リングサイズ調査作戦
「……つけてくださいよ」
「チェーン切れちゃったら嫌だもん。クマ子がつけてたら絶対失くさないよ。私、酔っ払うとアクセサリー外して失くしちゃうんだよね」
「俺が見てないとこで酒飲むの禁止します」
「はーい」
笑いながら言って、ぐっと体重を預けてくる。右腕を志保さんの腰に回してホールドしながら左手は彼女の左手を弄ぶ。何度も何度も薬指ばかりなぞっていると志保さんはくすぐったそうに身じろぐ。
「今日ね、津田からいいもの貰ったんですよ」
「いいもの?美味しい?」
「……食べ物ではないですね」
一度、志保さんを下ろして鞄を手にソファーへ戻る。並んで座って鞄から貰った包みを取り出すと志保さんの表情がぱっと輝いた。これは好反応。お気に召したようだ。
「ネイル?それ、この間サンプル奪い合いになってたやつだよね。その色、気になってたの」
「そういう時はちゃんと欲しいって主張してください。あいつたくさん貰ったって言ってましたよ」
「いや、ほら…若い子の方がさ、そういうの似合ってるし」
「変なところで遠慮しなくていいんですよ」
はい、と小瓶を手渡すと横顔が幼い少女のようになった。ふふん、とご機嫌にラッピングをはがしていく。その様を見ながらふとひらめく。
「志保さん、それちょっと貸してください」
「…なんで?」
「俺が塗ります」
「えー、いいよ。自分でできる」
「利き手は塗りづらいでしょ」
渋々といった様子で小瓶を俺に渡した志保さんはやや照れくさそうに右手を俺に差し出した。その手を取って、甲へとキスを落とす。もう、とはにかんで口元を突き出した彼女の唇にもキスをして、瓶のキャップを開けた。独特の匂いがふわりと広がる。邪魔くさいと思ったシリコンの飾りがキャップから取れて俺たちの間に転がった。
「あ、」
「かわいいね。おもちゃの指輪みたい」
するりと俺の手から逃れた志保さんの右手はそれを拾い上げて、想定外のスムーズさで左手の薬指に装着する。花のモチーフがついたネイルカラーと同じ色の飾り。悔しいくらい彼女の指にフィットしている。