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Quattro stagioni
第4章 ♡ la mia gattina
「志保さんが猫になったら俺、今夜無限ですよ。明日の昼までかかるかもしれないですよ」
ね、志保さん、と甘ったるく言うのはずるい。ちゅうっと耳の付け根に吸い付いて、カットソーの中に当たり前のように手を滑り込ませてくる。
「せ、せめてカーテン閉めて…」
「普通にするときは明るくても気にしないのに?」
「じゃあ、しない」
「分かりました。閉めますから」
結局、私が折れた。引っ越しの為に物件探しや業者の手配とあれこれ頑張ってくれた藤くんへのご褒美だ。にっこり笑顔で私の髪を撫でてベッドから下りた彼は鼻歌交じりに寝起きに開けたばかりのカーテンを閉めた。
「俺、ベッドで待ってるんで志保さん着替えたら戻ってきてください」
語尾にハートマークがついていそうだ。クローゼットを開けて紙袋を引っ張りだした藤くんはその中から中途半端に封の空いた下着セットの包みを私の手に押し付ける。
「…これに着替えるだけでいいの?」
「他のは俺が着けます」
「なら、ここで良くない?」
「生着替えされたら我慢できないんで」
「……分かった」
溜息をひとつ吐いて、詐欺パッケージの包みを手に寝室を出る。広いリビングで着替えてたまるか。すごすごと脱衣所まで行き、服を脱いでいった。
最初に着け耳を選んだ時はこんなことになるとは思わなかった。あの日は初めて踏み込んだ店の雰囲気に呑まれて知らず知らずの内にテンションが上がってしまったのだろう。
黒猫の耳よりもアメリカンショートヘアーのようなグレーと黒のしましまが可愛いと言ったのは確かに私だ。耳をそれにするなら下着も揃えようとも言った。ばか!なんであの時、そんな余計なことを。
手始めにオープンクロッチのショーツに足を通す。値段の割にしっかりした造りだろうが、フロントのボーダーの布部分が少なすぎる。
問題は上だ。とにかく小さい三角ビキニの胸当て。ご丁寧に猫の毛並を再現したプリントになっている。首の後ろで紐を結んでから下部の紐を背に回す。私のささやかな乳房のそれぞれの中央を辛うじてカバーできているレベルだ。
猫のコスプレというやつはここまでするものなのか。藤くんが言い出した当初は精々着け耳程度だろうと思っていたのだが、読みが甘すぎたらしい。この格好は恥じらい少ない私でもかなり羞恥を煽られる。大判のバスタオルで身体を隠して寝室へと向かった。