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Quattro stagioni
第6章 スタンダールの幸福 Ⅰ

揺れる瞳がこちらを向いた瞬間、思わず息を呑んだ。

― 似てる

入社してきたばかりの頃の都筑と雰囲気がよく似ている。顔の造作は違うが、目付きがとてもよく似ていた。都筑は気付いていないのか、いつの間にか覚えた愛想の良い笑顔でふたりに向かって、よろしく、と声をかけている。

「ほら、お前たち。お前らの教育担当でつく中原と都筑だ。自己紹介しろ」
「清水ケンシロウです。よろしくお願いします」
「……森、美月です」

ぺこりと頭を下げる。消え入りそうな声だ。部内にはもう1人、森姓の女子社員がいるが、どちらかというと明るい部類に入る彼女とは対照的だ。

「清水には都筑、森には中原がついてくれ。頼んだぞ」

部長がそう言ってばしんと都筑の背を叩く。さっき俺が叩いた位置と重なっていたのか都筑の眉間の皺は面白いくらいに深くなった。忌々しげに部長に視線をやって、逆じゃないですか、と口を尖らせている。

確かに、逆だろう。男の清水には俺が、女の森には都筑がついた方が色々と円滑に進みそうな気がする。だが、部長は思うところがあるのか、決定事項だとだけ言うと新人二人を俺たちに押し付けて軽快にフロアから出ていった。

「…とりあえず、他の社員に紹介するか」
「任せた」
「おい」
「いや、ほら、中原主任の方が社歴長いじゃないですか」
「お前…こういう時だけ先輩扱いすんのか」
「さっき敬って欲しそうだったし?よろしく」

部長の背を見送って言うと都筑はへらりと笑って逃げようとする。基本的にのらりくらりな都筑らしい。はあ、と溜息を吐いてから清水と森を促してそう広くはないフロアを案内して回ることにした。

社歴の長い社員たちへの紹介を済ませて、それから森アカネ、津田、藤たちに紹介していく。藤の野郎はしきりに都筑に話しかける清水が気に入らないようでむかつくくらい端正な顔を歪ませていた。

「森がふたりだと紛らわしいですよね。あ、そうだ、美月ちゃんでいきますか」

若い社員たちとの会話の中、一番人当たりの良い津田がにこりとしながら言う。完全に興味を失くしていた都筑は生返事で応じ、もう1人の森もそうしようと乗っかった。
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