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Quattro stagioni
第7章 スタンダールの幸福 Ⅱ
会社を出てからスマホを取り出し、メッセージを確認すると今夜約束をしている学生時代の友達から連絡が入っていた。4人で食事をする約束をしていて、わたし以外の3人は間もなくお店に着くところらしい。わたしも今、会社を出たから20分くらいで着くよ、と連絡を入れて歩き出す。
ネットや雑誌で話題のカジュアルダイニングの予約を取ってくれたのは一番仲良しの有希だった。わたしがお店に着くと3人は楽しげな声をあげてメニューを覗き込んでいた。
「ごめんね、遅くなっちゃった」
「おつかれー。ねえ、このお肉美味しそうだから頼もうって話してたんだけど、どう?」
「うん。いいね。飲み物はみんな頼んだ?」
「美月のこと待ってたよ。なににしよっか」
「ありがと。わたし、甘いのがいいかな」
席につくと左隣の有希がドリンクメニューを渡してくれた。有希と爽子はきっと生ビールで、エリカは白ワインだろう。3人はどれだけお酒を飲んでもあまり顔色が変わらない。少しのアルコールで顔どころか身体中赤くなるわたしは乾杯の生ビールに少し憧れていたりする。
4人の飲み物が揃って笑い合って乾杯。華奢なグラスを傾けるエリカは女性ばかりの職場は刺激が多いと言いながらメニューのサラダの欄に目を落とす。
「私のとこはおじさんばっかでさー、早速セクハラ祭りだよ。ほんとやだ」
「おじさんのセクハラなんか挨拶みたいなもんじゃない?美月は?大丈夫?なんもされてない?」
「え、わたしそういうキャラ?大丈夫だよ。あ、配属先にね、もうすっごいかっこいい人居た」
「ほら、美月って慣れるまでもじもじしてあんまり喋んないし。かっこいい人居るのいいなー、癒し欲しー」
おじさんばかりの職場だと笑い交じりの溜息を吐いた爽子に有希がからっと笑って言った。それから私を案じて言いながら髪をそっと撫でてくれる。有希は同い年だけれどお姉ちゃんみたいな存在だ。
「かっこいいってどんくらい?高崎くんくらい?」
爽子の言った高崎くんは学生時代モテにモテたキャンパスの王子様のことだ。有希の幼馴染で、爽子は彼に4年間片想いしていたけれど、結局気持ちは伝えられぬままだった。
「高崎くんよりかっこいいと思う。その人と同期の先輩がね、あれは観賞用だから本気になったらダメだって言ってたくらいだから多分うちの会社のアイドル的な存在みたい」