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Quattro stagioni
第7章 スタンダールの幸福 Ⅱ
わたしが言って、レゲエパンチを一口飲むと爽子は怪訝な顔をした。きっと、高崎くんよりかっこいい人なんて居るわけないとでも思っているのだろう。
それだけ彼を想っているなら、一言好きだと言ってしまえばいいのにとわたしたちはいつも爽子に言うけれど、彼女はそんなことを言ってしまって友達ですら居られなくなるのは嫌だと泣き出しそうな顔になる。
わたしはそれほどまでに誰かを好きだと思ったことはなかった。それなりに恋はした。就活でばたばたしている内に別れてしまったけれど、あの頃付き合っていた彼のことは確かに好きだった。だけど、言ってしまえばわたしがしてきた恋は全部『それなり』の恋だった。
「ね、有希、高崎くん元気?」
「自分で連絡しなよ。あいつは多分殺しても死なないから元気だろうけど」
「だって、返事来なかったら泣いちゃうもん」
有希と爽子の会話を聞きながらエリカが爽子の肩を抱いて、かわいいやつめ、と彼女の頬にキスをする。エリカは赤ん坊の頃からの付き合いの彼と近い内に籍を入れるらしい。
「なんか、いいな。みんな恋する乙女って感じ」
「こら、美月。私のこと忘れてる!」
「あ、ごめん。有希、一緒にがんばろ」
「それなら美月の会社の観賞用のイケメン紹介してよ」
「ええ…わたし殆ど喋ったことないよ。挨拶くらいしかしてないもん」
それにフリーとは限らないよ、と追って言う。確かに、と渋い顔になった有希はビールを飲んでから料理を注文するべく店員さんを呼んだ。エリカが選んだサラダに始まっていくつか料理を注文していく。
「じゃあさ、せめてフリーかどうか聞いてきてよ。それか他にかっこいい人居ないの?」
「美月に頼ってないで自分の会社で探したら?それか、司の友達紹介してもらう?」
「私、年上がいいんだよね。それにうちの会社は既婚率高いっぽくて」
「同い年の子だと有希はお姉ちゃんになっちゃうもんね」
わたしもエリカが言ったように感じることがある。大人びていて、優しくて、気遣いの出来る自慢の友人だ。