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Quattro stagioni
第7章 スタンダールの幸福 Ⅱ

「来月頭にわたしと同期の子の歓迎会やってくれるみたいだからその時聞けるように頑張るね」
「うん、任せた。でも無理しなくていいからね。まだもじもじ美月だろうし」
「大丈夫だよ。同じ苗字の先輩が居てね、その人とは結構喋れるんだから」

同じ森姓のアカネさんは雰囲気が有希によく似ている。配属の3日後くらいに家が近いことが分かってから他の先輩よりはよく喋るようになった。

アカネさん以外に言葉を交わすのは中原さんだけれど、その殆どが業務に関することだ。あとは、朝と帰りの挨拶。ふと、中原さんの顔が頭に浮かんだ。都筑さんを見ているときの横顔だった。

それから数時間、美味しい料理と共におしゃべりをして3人とは近くの駅で別れた。ひとりになって暗い夜道を歩きながら、翌日のことを思うと少しだけ気分が沈む。わたしはいつになったら清水くんと都筑さんが話しているように中原さんと言葉を交わすことが出来るのだろう。

中原さんは意地悪なわけではない。どうにかこうにかわたしと上手く接しようとしてくれているようではある。だけど、声をかけられると何故だか身構えてしまう。

部長の計らいで昼休憩はなるべく都筑さんと清水くんを交えて4人で取ることになっている。今日は都筑さんのお気に入りだという洋食屋でオムライスを食べた。その場は清水くんの独壇場と言っても良かった。彼が学生時代にどんなことをしていたとか、この先どんな仕事をしていきたいかを喋るのをわたし達…いや、わたしが適当な相槌を打ちながら聞いた。

恐らく、都筑さんは清水くんが仕事さえしてくれれば彼の人となりには全く関心がないらしい。話を聞いている風の表情ではあったけれど、8割も聞いていなかっただろう。

そんな都筑さんに呆れた素振りを見せた中原さんは気を使ってくれたのかわたしにも話を振ってくれた。それなのに、中原さんの視線を感じるとただでさえ下手くそな言葉はもっともっと下手くそになって自分の思うことはなにひとつ言えなかった。

「明日も、頑張らなきゃ」

小さな声は夜道に溶ける。よし、頑張れ、自分。そっとガッツポーズをして、帰路を急いだ。
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